福島地方裁判所 昭和63年(わ)24号 判決 1988年5月11日
本籍
福島県伊達郡飯野町大字飯野字町五〇番地
住居
福島市南沢又字下番匠田一八番地の六
歯科医師
飯久保正典
昭和一四年一一月八日生
右の者に対する所得税法違反事件につき、当裁判所は検察官赤松幸夫出席のうえ審理をし、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一〇月及び罰金一、五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、福島市南沢又字下番匠田一八番地の六に居住し、同所において「飯久保歯科医院」の名称で歯科医業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、一般診療収入を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和五八年分の実際総所得金額が六八、八六二、二三一円あつたのにかかわらず、昭和五九年三月一五日、福島市桜木町四番一一号所在の所轄福島税務署において、同税務署長に対し、その総所得金額が四二、一七一、六二七円でこれに対する所得税額が一五、九五八、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、昭和五八年分の正規の所得税額三二、九二二、九〇〇円と右申告税額との差額一六、九六四、八〇〇円を免れ、
第二 昭和五九年分の実際総所得金額が六五、四五七、九八九円あつたのにかかわらず、昭和六〇年三月一五日、前記福島税務署において、同税務署長に対し、その総所得金額が四一、八五五、五五一円でこれに対する所得税額が一四、八五六、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、昭和五九年分の正規の所得税額二九、一三六、七〇〇円と右申告税額との差額一四、二八〇、二〇〇円を免れ、
第三 昭和六〇年分の実際総所得金額が七三、八六一、九三八円あつたのにかかわらず、昭和六一年三月一四日、前記福島税務署において、同税務署長に対し、その総所得金額が四五、八七五、三〇三円でこれに対する所得税額が一五、六六〇、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、昭和六〇年分の正規の所得税額三二、四四一、九〇〇円と右申告税額との差額一六、七八一、一〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人の当公判延における供述
一 被告人に対する大蔵事務官の質問てん末書(六二、四、三付、六二、五、一四付、六二、五、一五付、六二、六、一〇付、六二、六、一二付)
一 被告人の大蔵事務官に対する上申書
一 被告人の検察官に対する供述調書
一 飯久保志津子(七通)、高野栄子、酒井正弘(二通)、榊原京宏、遠藤真理子に対する大蔵事務官の各質問てん末書
一 飯久保志津子、酒井正弘、榊原京宏、高橋善夫の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の収入除外額調査書、たな卸高調査書、仕入調査書、専従者給与調査書、措置法差額調査書、青色申告控除額調査書、不動産所得調査書、利子所得調査書、雑所得調査書
一 検察事務官作成の電話聴取書
判示第一の事実につき
一 押収されている所得税確定申告書一綴(昭和六三年押第一二号の一)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和五八年一月一日至昭和五八年一二月三一日)
判示第二の事実につき
一 押収されている所得税確定申告書一綴(前同号の二)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和五九年一月一日至昭和五九年一二月三一日)
判示第三の事実につき
一 押収されている所得税確定申告書一綴(前同号の三)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和六〇年一月一日至昭和六〇年一二月三一日)
(法令の適用)
判示所為 いずれも所得税法二三八条(懲役と罰金を併科)
併合加重 懲役刑につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(最も犯情の重い第一の罪の刑に加重)
罰金刑につき同法四五条前段、四八条二項
労役場留置 同法一八条
執行猶予 同法二五条一項
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 芥川具正)